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暮らしを再設計する リノベーションのこれから|第6回

リノベーションと建築法規

知らなかったでは済まない改修のルール


知らなかったでは済まない改修のルール
知らなかったでは済まない改修のルール


リノベーションでは、間取りや設備、仕上材を自由に変更できるように感じます。

自分が所有する住宅なのだから、室内をどのように変えるかは自由だと思う方もいるでしょう。

しかし、建物には、

建築基準法消防法都市計画法自治体の条例マンションの管理規約

など、さまざまなルールが関係します。

工事内容によっては、建築確認申請が必要です。

建築確認申請が不要であっても、改修後の建物は建築基準法などに適合していなければなりません。

結論からいえば、リノベーションの法規確認は、間取りを決めた後に行うものではありません。

計画を始める前に、建物と敷地の法的な条件を確認する必要があります。

2025年4月からは、2階建て木造住宅などで行う大規模なリフォームについて、建築確認手続の対象が拡大されました。

また、住宅を店舗、宿泊施設、福祉施設などへ変える場合は、用途変更に関する確認も必要です。

法規を後回しにすると、

希望する壁を撤去できない増築できない用途を変更できない着工時期が遅れる追加の設計費や工事費が発生する

といった問題につながります。

「工事ができるか」を確認してから、「どのような空間にするか」を考える。

これが、リノベーションの基本的な順序です。

▽建築確認とは何か

建築確認とは、建築工事に着手する前に、その計画が建築基準法や関係法令に適合しているかを、建築主事や指定確認検査機関が確認する手続です。

新築だけでなく、

増築改築移転大規模の修繕大規模の模様替一定の用途変更

なども対象になる場合があります。

建築確認が必要な工事では、確認済証の交付を受ける前に着工できません。

また、工事完了後には完了検査を受け、計画どおりに施工されていることが確認されると、検査済証が交付されます。

ただし、建築確認は「どのような工事でも自由に行ってよい」という許可ではありません。

申請対象となった計画について、関係規定への適合を確認する手続です。

建築確認が不要な工事でも、建築基準法に反する工事を行ってよいわけではありません。

国土交通省も、建築確認手続が不要なリフォームであっても、改修後の建物は建築基準法の規定に適合させる必要があると明記しています。

▽2025年4月から何が変わったのか

2025年4月の改正建築基準法施行により、2階建て木造一戸建て住宅などで行う「大規模の修繕」または「大規模の模様替」は、建築確認手続の対象となりました。

大規模なリフォームとは、単に工事金額が高い工事や、室内全体をきれいにする工事を指す言葉ではありません。

建築基準法上は、

壁柱床梁屋根階段

という主要構造部の一種類以上について、過半を修繕または模様替する工事を指します。

例えば、屋根や床を広い範囲でつくり直す場合や、主要な壁を過半にわたり改修する場合などは、建築確認が必要になる可能性があります。

一方、

キッチンの交換トイレの交換浴室の交換手すりの設置スロープの設置構造上重要でない間仕切壁の変更

などは、それだけで直ちに大規模の修繕・模様替に当たるものではありません。

ただし、複数の工事を合わせた結果、主要構造部の過半を改修する場合もあります。

工事名称が「リフォーム」「リノベーション」「内装工事」のどれであるかは、建築確認の要否を決める基準ではありません。

実際にどの部分を、どの範囲まで、どのような方法で改修するかによって判断します。

▽スケルトンリノベーションなら必ず確認申請が必要なのか

内装や設備をすべて撤去するスケルトンリノベーションでも、必ず建築確認が必要になるとは限りません。

反対に、「部分リフォーム」という名称でも、主要構造部を過半にわたって改修すれば、建築確認が必要になる場合があります。

例えば、壁紙や石膏ボードだけを撤去して張り替える工事と、壁を構成する下地や構造部分まで広範囲に更新する工事では、法的な扱いが異なる可能性があります。

床についても、

仕上材だけを張り替える下地まで撤去する構造床をつくり直す

では、工事範囲が異なります。

「全部解体するから必要」「内装工事だから不要」

という名称だけでは判断できません。

既存建物の構造と、撤去・改修する部位を図面上で整理し、建築士や確認検査機関、特定行政庁へ確認する必要があります。

▽確認申請が不要なら、法規を調べなくてよいのか

建築確認申請の対象外であっても、法規確認は必要です。

改修後の建物には、

構造安全性防火性能避難経路採光換気階段の安全性廊下や出入口用途地域による用途制限

などの規定が関係します。

例えば、確認申請が不要な間取り変更でも、居室として使う部屋には、原則として採光や換気に関する条件があります。

既存の窓を家具や壁で塞ぐことで、居室に必要な採光や換気を確保できなくなる可能性があります。

階段をつくり直す場合には、幅、蹴上げ、踏面、手すりなどを確認します。

防火地域や準防火地域では、窓や外壁の改修方法が制限されることがあります。

確認申請が不要ということは、

法規確認が不要という意味ではありません。

手続がないため、設計者と施工者が自ら確認しなければならない部分が増えるともいえます。

▽既存不適格建築物とは何か

古い建物を調査すると、現在の建築基準法に適合していない部分が見つかることがあります。

ただし、現在の基準に合っていない建物が、すべて違反建築物とは限りません。

建築当時の法令には適合していたものの、その後の法改正によって現在の基準に合わなくなった建物は、一般に「既存不適格建築物」と呼ばれます。

例えば、

耐震基準の変更防火規定の変更道路や用途地域の変更構造基準の変更

などによって、建築当時は適法だった建物が、現在の基準には適合しなくなることがあります。

既存不適格は、違反建築物と同じではありません。

一方、建築後に無断で増築したり、法令に反する改修を行ったりした部分は、単なる既存不適格とは扱われない可能性があります。

国土交通省は、既存不適格建築物について、一定の範囲内の増築、改築、大規模修繕、用途変更などでは、現在の基準を建物全体へ一律に遡及させない緩和措置を設けています。

ただし、緩和を適用するためには、建物の法適合状況を調査し、どの規定について既存不適格であるのかを整理する必要があります。

古いからすべて現行法へ直さなければならないわけでも、古いから何も確認しなくてよいわけでもありません。

工事内容と既存建物の状態を合わせて判断します。

▽検査済証がない建物は工事できないのか

古い住宅では、確認済証や検査済証が見つからないことがあります。

検査済証がないからといって、直ちに違反建築物だと断定することはできません。

過去には、建築確認を受けていても完了検査を受けていない建物が多く存在しました。

また、書類を紛失している場合もあります。

ただし、検査済証がなければ、

建築時の計画どおり完成したのかその後に増改築されていないか現在どの部分が適法なのかどの部分が既存不適格なのか

を確認する作業が難しくなります。

国土交通省は、検査済証がない建築物について、指定確認検査機関などを活用して法適合状況を調べるためのガイドラインを示しています。現在は「既存建築物の現況調査ガイドライン」として、増築や用途変更などの際に建築士が調査する手順が整理されています。

書類がない場合は、登記事項証明書、固定資産税資料、過去の図面、航空写真、工事記録などを集め、現況と照合します。

調査に時間や費用がかかることもあるため、計画の早い段階で確認しておくべき項目です。

▽増築には敷地全体の確認が必要

部屋を少し広げる、バルコニーへ屋根を付ける、サンルームを設けるといった工事は、増築に当たる場合があります。

増築では、増やす部分だけを見ればよいわけではありません。

敷地全体について、

建ぺい率容積率道路との関係敷地境界用途地域防火地域・準防火地域高さ制限斜線制限既存建物の構造

などを確認します。

すでに建ぺい率や容積率の上限に近い建物では、小規模な増築でも計画できない場合があります。

過去に増築された部分が登記や確認申請へ反映されていないこともあります。

図面上の面積だけで判断せず、現況を測量し、登記や確認申請資料と照合する必要があります。

「一畳程度だから問題ない」という面積の小ささは、合法性を保証しません。

法規は、工事の気軽さに同情してくれません。

▽減築でも確認すべきことがある

床面積を減らす減築は、増築より自由に行えるように見えます。

しかし、建物の一部を撤去すれば、

構造バランス屋根や外壁の防水防火性能避難経路採光や換気残る部分の耐震性

へ影響します。

特に、2階の一部を撤去する、吹抜けを新設する、階段位置を変更するといった工事では、床や梁、耐力壁の構成が変わります。

床面積が減るから安全になるとは限りません。

構造上の検討と法規確認が必要です。

▽住宅を店舗や宿泊施設へ変える場合

住宅を、

店舗事務所飲食店旅館・ホテル福祉施設保育施設

などへ変更する場合は、用途変更に当たる可能性があります。

建物の用途が変わると、求められる安全性能も変わります。

不特定多数の人が利用する施設では、住宅より厳しい防火・避難規定が適用される場合があります。

2019年6月の法改正により、用途変更によって特殊建築物となる部分の床面積が200㎡以下の場合は、建築確認手続が不要となりました。

しかし、200㎡以下なら自由に用途変更できるわけではありません。

建築確認が不要でも、建築基準法や消防法などへの適合は必要です。

用途地域によっては、希望する店舗や宿泊施設を設けられない場合があります。

また、自治体の条例、保健所、消防署、旅館業法など、建築基準法以外の手続が必要になることもあります。

用途を変更する計画では、物件を購入したり賃貸契約を結んだりする前に、実現可能性を確認することが重要です。

内装工事を始めてから営業許可が取れないと分かっても、壁や床は事情を察して元へ戻ってはくれません。

▽マンションは建築基準法だけでは決められない

マンションのリノベーションでは、建築基準法に加えて、管理規約と使用細則を確認します。

区分所有者が所有している専有部分でも、工事内容によっては管理組合への申請と承認が必要です。

国土交通省のマンション標準管理規約では、共用部分や他の専有部分へ影響を与えるおそれのある修繕・模様替について、事前に理事長へ申請し、理事会の承認を受ける形が示されています。

申請時には、一般的に、

設計図仕様書工程表使用材料施工会社作業時間床材の遮音性能

などの提出を求められます。

マンションごとに規定は異なるため、標準管理規約ではなく、実際の管理規約と使用細則を確認します。

特に注意が必要なのは、

窓玄関扉バルコニーコンクリート躯体共用配管パイプスペース換気ダクトエアコン室外機置場

などです。

住戸の中や専用使用部分に見えても、共用部分として扱われることがあります。

また、床材には遮音等級や工法の指定がある場合があります。

希望する製品を発注してから管理組合の承認が得られなければ、材料を変更しなければなりません。

管理規約は、見積り後ではなく、設計前に確認します。

▽間取り変更では採光・換気・防火も確認する

既存の二室を一室にする場合や、一室を二室に分ける場合は、窓の位置が重要です。

新しくつくる部屋を寝室や子ども部屋として使う場合、居室として必要な採光や換気を確保できるか確認します。

窓のない場所を壁で区切っただけでは、建築基準法上の居室として成立しない可能性があります。

また、住宅用火災警報器、換気設備、エアコン、コンセント、避難経路なども合わせて計画します。

開放的なLDKをつくるために壁を撤去する場合も、

構造上必要な壁ではないか防火区画の一部ではないか煙や火が広がりやすくならないか階段へ直接煙が流れないか

を確認します。

壁は、空間を狭くするためだけに存在しているわけではありません。

構造、防火、音、温熱、収納など、複数の役割を持っています。

▽窓や外壁を変更する場合

窓の大きさや位置を変更すると、外観だけでなく、

構造防水採光換気防火隣地との関係

へ影響します。

木造住宅では、窓を広げることで耐力壁を減らしてしまう場合があります。

防火地域や準防火地域では、延焼のおそれのある部分に設ける窓や扉に、防火設備が必要となる場合があります。

マンションでは、窓は原則として共用部分として扱われることが多く、個人の判断だけでは交換できません。

内窓であれば設置可能でも、既存サッシそのものの交換は管理組合の計画で行う建物もあります。

窓は単なる開口部ではありません。

建物の構造、外皮、防火性能を構成する一部です。

▽階段や吹抜けの変更

階段の位置を変更したり、吹抜けを新設したりすると、床を大きく撤去することになります。

その場合、

梁の位置床の構造階段の幅蹴上げと踏面手すり頭上の高さ転落防止火や煙の広がり

などを検討します。

吹抜けは、光や開放感を得られる一方で、上下階へ音や煙が伝わりやすくなります。

階段をインテリアの一部として美しく見せるだけでなく、日常の安全と避難経路として考えなければなりません。

▽耐震改修にも法規確認が必要

耐震性を高める工事だからといって、他の法規確認が不要になるわけではありません。

耐力壁を増設すると、

窓が小さくなる採光や換気が不足する動線が変わる避難経路へ影響する

場合があります。

屋根を軽量化する場合には、屋根材の防火性能や地域条件を確認します。

基礎を補強する際には、配管や床下換気との関係もあります。

安全性能は一つだけで成立するものではありません。

耐震、防火、避難、温熱、使いやすさを総合して設計します。

▽アスベストも法的な確認事項

既存建物を解体・改修する場合には、石綿、いわゆるアスベストの事前調査が必要です。

工事の規模にかかわらず、解体や改修の対象となる材料について、原則として石綿含有の有無を事前に調査します。

建築物の改修工事で請負金額が税込100万円以上の場合は、一定の条件のもとで調査結果を電子システムにより報告する必要があります。

報告対象の金額未満であっても、事前調査そのものが不要になるわけではありません。

発注者には、確認申請図書や設計図など、石綿の有無を調べるために役立つ資料を施工者へ提供する配慮も求められています。

石綿含有建材が確認された場合は、材料の種類や作業方法に応じた飛散防止対策、届出、作業者の資格などが必要です。

解体後に判明すると、工程と費用が大きく変わるため、見積り段階から調査費用を含めておきます。

▽よくある五つの誤解

1.自分の家なら自由に工事できる

所有権があっても、建築基準法や条例には従う必要があります。

マンションでは管理規約にも従います。

2.確認申請が不要なら合法である

確認申請の要否と、法令への適合は別の問題です。

3.古い建物だから現在の基準は関係ない

既存不適格として扱える部分もありますが、工事内容によって現行基準が適用されることがあります。

4.壁を壊してみてから考えればよい

構造、防火、アスベストなどを事前に確認せず解体すると、工事停止や追加費用につながります。

5.施工会社がすべて判断してくれる

施工者にも確認責任はありますが、構造や用途変更、既存不適格などには、建築士や行政との協議が必要です。

誰が、どの範囲を確認するのかを契約前に整理します。

▽法規確認の進め方

リノベーションでは、次の順序で確認すると整理しやすくなります。

1.資料を集める

確認済証、検査済証、図面、登記事項証明書、過去の工事資料を集めます。

2.建物と敷地を調べる

現況寸法、構造、増築の有無、道路、用途地域などを確認します。

3.希望する工事を整理する

撤去する壁、変更する用途、増減する床面積を明確にします。

4.建築確認の要否を検討する

主要構造部の改修範囲、建物の規模、用途変更の面積を確認します。

5.関係機関へ相談する

特定行政庁、確認検査機関、消防署、保健所、管理組合などへ必要に応じて相談します。

6.申請期間を工程へ入れる

確認申請や管理組合承認には時間が必要です。

工事開始日から逆算します。

7.工事中の変更を管理する

確認申請を行った工事では、現場判断で計画を変更できない場合があります。

変更内容を設計者と確認します。

▽法規は、設計を妨げるだけのものではない

法規というと、自由な設計を制限するものと思われがちです。

確かに、希望する間取りや用途をそのまま実現できないことはあります。

しかし、建築法規は、

地震で倒れにくくする火災時に逃げられるようにする室内へ光や風を取り入れる周辺環境への影響を抑える建物を安全に使い続ける

ための最低限の基準でもあります。

法規を無視して自由な空間をつくることが、よいリノベーションではありません。

制限を理解し、その中で別の方法を考えることが設計です。

撤去できない壁を収納へ組み込む必要な耐力壁を空間の区切りとして使う窓を増やせない場所へ室内窓を設ける既存の階段を生かしながら動線を見直す

制約が、空間の特徴になることもあります。

▽まとめ

リノベーションの法規確認は、工事直前に行う事務手続ではありません。

建物の現状と、実現できる計画の範囲を明らかにするための設計作業です。

確認すべきことは、

建築確認が必要か既存不適格部分があるか過去の増改築が適法か用途変更が可能か構造や防火に問題がないかマンション規約に適合するか石綿の事前調査が必要か

という点です。

特に重要な数字は、

2025年4月2階建て木造住宅などの大規模な修繕・模様替について、建築確認の対象が拡大

主要構造部一種類以上の過半大規模の修繕・模様替を判断する基本的な範囲

200㎡特殊建築物への用途変更で、建築確認手続の要否を判断する基準の一つ

税込100万円建築物の改修工事における石綿事前調査結果の報告対象を判断する金額基準の一つ

です。

ただし、数字だけで最終判断はできません。

建物の構造、規模、地域、用途、工事方法によって扱いは異なります。

本記事だけで、個別建物の建築確認要否や法適合性を確定することはできません。

実際の計画では、建築士、特定行政庁、確認検査機関、消防署、管理組合などへの確認が必要です。

「この程度なら大丈夫だろう」と工事を始める前に、

何を変えるのかどの法律が関係するのか誰へ確認するのか

を整理する。

知らなかったでは済まないからこそ、最初に知る。

それが、安心してリノベーションを進めるための基本です。

次回は、

「見た目より先に考えたい|耐震・断熱・省エネ・防音の性能向上リノベーション」

をテーマに、完成写真には映りにくい住宅性能について掘り下げます。

参考資料

  • 国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」


    最終更新:2024年10月25日


    参照日:2026年8月5日

  • 国土交通省「リフォームにおける建築確認要否の解説事例集」


    参照日:2026年8月5日

  • 国土交通省「既存建築物の活用の促進について」


    参照日:2026年8月5日

  • 国土交通省「建築基準法改正により小規模な建築物の用途変更の手続きが不要となりました」


    2019年6月25日施行


    参照日:2026年8月5日

  • 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」


    参照日:2026年8月5日

  • 厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」


    参照日:2026年8月5日

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