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暮らしを再設計する リノベーションのこれから|第9回

8月24日
読了時間: 16分

更新日:9月3日

リノベーションの資金計画

工事費だけを見てはいけない理由

リノベーションの資金計画
リノベーションの資金計画

リノベーションを考え始めると、やはり最初に気になるのは金額です。

「この工事はいくらくらいかかりますか」

当然の質問です。

しかし、リノベーションの資金計画で注意したいのは、

見積書に記載された工事費と、実際にリノベーションを終えるまでに必要なお金は、必ずしも同じではない

ということです。

設計や調査各種申請アスベスト調査仮住まい引越し家具や家電融資に伴う費用工事中に判明する追加工事

など、計画によっては工事費以外にも費用が発生します。

さらに、補助金や減税制度を利用できる場合もあります。

リノベーションの資金計画とは、

「工事をいくらまでにするか」

だけを決めることではありません。

その住まいに、いつ、何のために、どこまでお金を使うのかを整理すること

だと考えます。

▽「予算はいくらですか」の前に考えたいこと

打ち合わせでは、よく最初に予算を確認します。

500万円1,000万円1,500万円

数字を決めれば計画しやすく見えます。

しかし、その数字の中に何が含まれているのかを決めていなければ、同じ「1,000万円」でも意味が変わります。

例えば、

工事請負金額だけで1,000万円なのか

設計費や申請費まで含めて1,000万円なのか

家具や家電も含めた総額で1,000万円なのか

によって、実際に工事へ使える金額が違います。

まず決めたいのは、

工事予算ではなく、プロジェクト全体に使える総予算です。

その総額から、工事以外に必要となる費用を整理し、残った金額を工事へ配分します。

順番を逆にすると、工事完成間際になって、

家具を買う予算がない引越し費用を考えていなかった追加工事へ対応できない

ということが起こります。

▽「工事費」と「総事業費」を分けて考える

リノベーションでは、大きく二つのお金を分けて考えると整理しやすくなります。

工事費

解体大工工事内装設備電気給排水空調建具塗装家具工事

など、施工会社へ支払う工事そのものの費用です。

工事以外の費用

設計費現況調査費構造検討費測量各種申請アスベスト調査・分析確認検査機関などの手数料仮住まい引越し荷物の保管家具家電カーテン・ブラインド通信設備融資関係費用

などがあります。

すべての工事で全部必要になるわけではありません。

マンションの部分リフォームなら不要な項目も多いでしょう。

一方、戸建住宅を全面改修し、耐震・断熱・間取り変更まで行えば、設計や調査に必要な項目は増えます。

重要なのは、

自分の工事では何が必要なのかを、最初に一覧にすることです。

▽見積書は「合計金額」より中身を見る

複数社から見積りを取ると、

A社 ○○万円B社 ○○万円C社 ○○万円

と合計金額を比べたくなります。

しかし、リノベーションの見積りでは、同じ図面を見ていても各社の工事範囲が一致しているとは限りません。

ある会社には、

養生廃材処分仮設工事下地補修クリーニング

まで含まれている。

別の会社では、

「必要になった場合は別途」

となっている。

その状態で総額だけを比較しても、どちらが安いかは判断できません。

国土交通省は、リフォームについて相談や具体的な見積書の確認を行う「リフォーム無料見積チェックサービス」などの消費者支援を案内しています。契約前に、工事項目や数量、単価、工事範囲などを確認することが重要です。

見積書では、

何をするのかどこまで含むのか数量はいくつなのか材料は何なのか別途工事は何なのか

を確認します。

一式表記がすべて悪いわけではありませんが、金額の大きな工事がすべて「一式」では、変更時の増減も分かりにくくなります。

▽「含まれていないもの」を確認する

見積書を見る時には、

何が入っているか

だけでなく、

何が入っていないか

を見ることも重要です。

例えば、

既存配管の交換は含まれているか分電盤の交換は含まれているか下地補修はどこまで含むかアスベストが確認された場合はどうするか管理組合への申請費はどうするか駐車場代や搬入費は含むかエアコンや照明器具は施主支給か家具移動は誰が行うのか

などです。

「別途」と書かれている項目は、工事が始まると消えてなくなる費用ではありません。

むしろ後から請求される可能性がある費用です。

契約前に、

含む含まない工事中に判断する

の三つへ分けておくと、金額を把握しやすくなります。

▽リノベーションには「分からない部分」がある

新築と既存住宅の工事で大きく違うのは、完成した建物を相手にすることです。

壁の中床下天井裏配管下地構造材

は、工事前にすべて確認できるとは限りません。

第5回でも取り上げたように、非破壊の現況調査には限界があります。

解体後に、

配管が想定と違っていた木材が腐朽していた床下地が使えなかった図面にない梁があったアスベスト含有建材が見つかった

という可能性があります。

だからこそ、

「追加工事は絶対ありません」

という計画より、

追加工事が起こった場合にどう判断するか

を決めておく方が現実的です。

追加工事が発生したら、

原因必要性工事方法追加金額工程への影響

を確認し、発注者の了承を得てから施工する。

このルールを契約前に整理しておきます。

▽予備費はいくら必要なのか

リノベーションでは、工事中の不確定要素に対応するため、総予算の中に余裕を持たせておく方が安全です。

では何%あればよいのでしょうか。

すべてのリノベーション工事に共通する、公的に定められた予備費率は確認できません。

築年数建物構造図面の有無事前調査の範囲解体範囲工事規模

によって、不確定要素が異なるためです。

したがって、

「必ず○%」

と決めるのではなく、建物の状況に応じて考えます。

図面が揃い、改修範囲も限定的なマンションと、

築年数が古く、増改築履歴が分からない木造住宅を全面解体する工事では、同じ考え方にはできません。

予備費は、使い切るためのお金ではありません。

問題が発生しなければ、使わずに残ればよいのです。

▽「必要な工事」と「やりたい工事」を分ける

予算調整で有効なのが、工事項目を三つに分ける方法です。

1.今やらなければならない工事

雨漏り構造補強漏水危険な電気設備著しい劣化

など、安全や建物の維持に関係する工事です。

2.今回一緒にやった方がよい工事

断熱配管更新分電盤更新窓改修下地補修

など、内装を撤去した機会に施工する方が合理的な工事です。

3.暮らしをより良くする工事

造作家具仕上材のグレードアップ照明演出設備機能の追加

などです。

もちろん3番もリノベーションの大切な目的です。

しかし、予算を調整する際に、

構造補強を削ってキッチンのグレードを上げる

という順序にはしたくありません。

安全性建物性能設備暮らし意匠

という優先順位を考えながら調整します。

▽全部を一度にやらないという選択

予算が合わない場合、

希望を全部諦める

か、

予算を増やす

という二択だけではありません。

工事を段階的に行う方法があります。

例えば、

第1期雨漏り、耐震、配管など建物の基本性能

第2期キッチン、浴室など設備更新

第3期個室や収納、オーダー家具

という進め方です。

ただし、段階工事では同じ場所を何度も壊さないよう、最初に全体計画をつくっておくことが重要です。

将来配管を通す場所コンセントの増設家具の下地間仕切壁の位置

などを準備しておけば、後の工事を減らせます。

「今できないから考えない」のではなく、

今はやらないが、将来できるようにしておく

という設計もあります。

▽借りるお金と、自分のお金を分ける

リノベーション資金には、

自己資金住宅ローンリフォームローン

などがあります。

中古住宅を購入して同時にリノベーションする場合には、住宅取得費と改修費を含めた融資を検討する場合もあります。

すでに所有している住宅を改修する場合には、リフォームローンなどが選択肢になります。

住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」は、一定の省エネルギー工事を行う住宅を対象とする融資で、2026年8月13日現在、融資額は最大1,000万円、返済期間は最長10年、全期間固定金利、原則として無担保・無保証・融資手数料無料となっています。

対象となる省エネ工事と同額まで、キッチン交換や外壁塗装などその他のリフォーム費用にも利用できます。利用には工事要件があり、着工前に適合証明の申請と工事計画の確認が必要です。

ローンは、

借りられる金額

ではなく、

無理なく返せる金額

から考えます。

住宅ローン以外にも、

教育費自動車介護老後資金建物の将来修繕費

が必要になります。

リノベーションへ資金を集中させすぎて、完成後の生活が苦しくなっては本末転倒です。

▽退職前か、退職後か

50代、60代でリノベーションを検討する場合には、退職時期との関係も重要になります。

現役時代には収入がありますが、

返済期間が長くなる退職後まで返済が残る

可能性があります。

退職後は、

借入条件毎月の収入手元資金

が変わります。

住宅金融支援機構のグリーンリフォームローンには、満60歳以上を対象に、毎月の支払いを利息のみとする「高齢者向け返済特例」もあります。元金は申込人が亡くなった際に、相続人による一括返済または担保物件の売却によって返済する仕組みです。通常の商品とは条件が異なるため、内容を理解したうえで利用を判断する必要があります。

年齢だけで、

ローンを使う現金で払う

と決めるのではなく、

工事後に手元資金をどの程度残しておくか

まで考えます。

▽補助金を「予算」に入れすぎない

2026年には、国土交通省、経済産業省、環境省による「住宅省エネ2026キャンペーン」が実施されています。

既存住宅のリフォームでは、

みらいエコ住宅2026事業先進的窓リノベ2026事業給湯省エネ2026事業賃貸集合給湯省エネ2026事業

が用意されています。

2026年8月13日時点で、予算に対する申請額の概算割合は、

みらいエコ住宅2026のリフォーム 3%先進的窓リノベ2026 17%給湯省エネ2026 37%賃貸集合給湯省エネ2026 30%

と公表されています。各事業は予算上限に達すると、交付申請や予約の受付を終了します。

ここで重要なのは、

補助金を受けられる予定

と、

補助金の交付が確定している

は同じではないということです。

補助金を受けられなければ工事代金を支払えない、という資金計画は避けるべきです。

まず補助金がなくても成立する予算をつくり、

利用できれば負担を減らせる

という位置づけの方が安全です。

また、国費が充当されている自治体制度など、一部は国の補助事業と併用できません。制度ごとの条件確認が必要です。

▽補助金のために工事をしない

例えば、

窓の交換に補助金が出る給湯器の交換が対象になる

と聞けば、せっかくだから工事したくなります。

しかし、

まだ十分使える設備なのか本当にその部屋の窓が問題なのかその工事が現在の住宅に必要なのか

を先に考えるべきです。

補助制度は、必要な工事を後押しするものです。

補助金をもらうために不要な工事を増やせば、支出そのものは増えます。

お金が戻ってくるという言葉には、人類は妙に弱いのですが、最初に払っているのも自分です。

▽減税制度も確認する

補助金以外に、リフォームに対する税制上の支援があります。

2026年度税制改正により、一定のリフォームを対象とする「リフォーム促進税制」は延長されています。

所得税の対象期間は、

2026年1月1日から2028年12月31日

固定資産税の減額措置は、

2026年4月1日から2031年3月31日

です。

対象となる工事には、

耐震バリアフリー省エネ三世代同居対応長期優良住宅化子育て対応

などがあり、要件を満たした場合、工事内容に応じて所得税の税額控除や固定資産税の減額を受けられる可能性があります。国土交通省は、所得税では最大60~80万円の控除、固定資産税では工事内容により一定割合の減額制度を案内しています。実際の控除額は所得税額や工事内容などによって異なります。

また、住宅ローン減税の増改築についても、2026年度税制改正で適用期間が5年間延長され、

2026年1月1日から2030年12月31日

までとなっています。

税制は工事内容、住宅、所得、居住開始時期などに要件があります。

工事が終わってから、

「使えたらしい」

と気づくのではなく、計画段階で確認します。

▽補助金・減税・ローンは「設計前」に確認する

支援制度には、工事内容だけでなく、

工事前の申請対象製品性能証明施工者登録契約時期

などの条件が付くことがあります。

住宅省エネ2026キャンペーンでは、消費者本人ではなく、消費者と直接工事契約を結ぶ登録事業者が交付申請手続を行います。

住宅金融支援機構のグリーンリフォームローンも、着工前の適合証明申請が必要です。

つまり、

工事が完成してから探す

では遅い制度があります。

資金計画は、見積りが完成してから考えるものではありません。

設計と同時に行います。

▽家具・家電を忘れない

リノベーションが完成すると、古い家具が新しい空間に合わなくなることがあります。

冷蔵庫洗濯機エアコンテレビ照明カーテンダイニングテーブルソファベッド

などを買い替える場合があります。

また、造作家具を工事見積りに含めるのか、市販家具として別予算にするのかも決めます。

特に、

冷蔵庫洗濯機テレビ電子レンジ

などは、設計時に寸法と容量を決めておかないと、完成後に納まらないことがあります。

家具・家電予算を最後に残すのではなく、最初から総予算へ入れておきます。

▽仮住まいにもお金がかかる

全面リノベーションでは、工事期間中に住み続けられないことがあります。

その場合、

仮住まいの家賃敷金・礼金など引越し荷物保管駐車場インターネット移転

などが必要になります。

さらに、

現在の家から仮住まいへ移る

そして、

仮住まいから完成した家へ戻る

ため、引越しが二回になることがあります。

工事費とは別の出費ですが、工事を行うためには必要です。

工期が延びれば仮住まい費も増える可能性があります。

資金計画と工程計画は、別々には考えられません。

▽資金計画は「削る作業」ではない

予算を決めるというと、

夢を削る我慢する安い材料へ変える

というイメージを持つかもしれません。

しかし本来の資金計画は、

何にお金を使うかを決める作業

です。

例えば、

毎日使うキッチンにはお金をかける。

ほとんど人が入らない部屋は既存の床を残す。

見えなくなる耐震補強は削らない。

造作家具は本当に必要な場所だけつくる。

将来交換できる設備は、必要以上に高額なものへしない。

こうした判断です。

100万円削ることより、

その100万円をどこへ使えば生活が最も良くなるか

を考える。

それが設計と資金計画の関係です。

▽「安くする」と「無駄をなくす」は違う

工事費を下げる方法として、

材料のグレードを下げる工事範囲を減らす

ことがあります。

しかし、それだけがコスト調整ではありません。

既存床を使えるなら残す。

使える建具を再利用する。

水回りの位置を大きく動かさない。

既存配管の状態が良ければ生かす。

壁をすべて壊さず必要な部分だけ変更する。

既製品とオーダー家具を使い分ける。

こうした方法もあります。

すべてを新品へ交換しないことは、第2回で取り上げた「本当のリノベーション」にもつながります。

安い材料へ置き換えるより、

工事そのものを減らす方が合理的な場合があります。

▽見積りは一度で完成しない

リノベーションの見積りは、

最初の希望現況調査基本設計詳細設計施工方法

によって変わります。

最初の概算見積りと、契約時の見積りが完全に同じとは限りません。

むしろ計画を具体化するにつれて、

必要な工事が増える不要な工事が見つかる材料が決まる数量が正確になる

ため、金額の精度が上がります。

大切なのは、金額が変わらないことではありません。

なぜ変わったのかが説明できることです。

打ち合わせごとに、

今回追加したもの削除したもの保留しているもの

を整理します。

▽契約前に「最終予算表」をつくる

工事契約前には、工事見積書とは別に、プロジェクト全体の資金表を一度つくることをおすすめします。

例えば、

A 建物工事

建築設備電気家具工事など

B 設計・調査・申請

設計構造アスベスト各種申請など

C 生活移転費

仮住まい引越し荷物保管など

D 家具・家電

家具家電カーテン照明など

E 資金関係

ローン関係費用など

F 追加工事への備え

予備費

G 支援制度

補助金減税

このように一覧にすると、

工事費だけで予算を使い切っていないか

を確認できます。

補助金や減税は、工事時の支払いにそのまま間に合うとは限らないため、手元資金とは分けて考えます。

▽資金計画で確認したい七つの数字

リノベーションを始める前に、少なくとも次の数字を把握します。

1.総予算

この計画全体へ最大いくら使うのか。

2.工事費

施工会社へ支払う予定金額。

3.工事外費用

設計、申請、仮住まい、家具など。

4.自己資金

現在使える現金。

5.借入額

ローンを利用する場合の金額。

6.毎月の返済額

工事完成後の生活費と両立できるか。

7.工事後に残す資金

将来の修繕、生活、医療、教育、老後などのために残すお金。

最初の六つだけでなく、

七つ目を残しておくこと

が大切です。

家をきれいにするために預金を全部使ってしまえば、その翌日に給湯器が壊れた時、住宅から妙な試験を課されることになります。

▽まとめ

リノベーションの資金計画は、工事見積りの金額だけを確認することではありません。

工事費設計・調査申請仮住まい引越し家具・家電追加工事ローン補助金減税

まで含めて考えます。

そして重要なのは、

いくら使えるか

だけではありません。

何にお金を使うべきなのか。

安全に関わる工事。

建物を長く使うための工事。

毎日の生活を改善する工事。

将来へ回せる工事。

それらに優先順位をつけます。

リノベーションは、予算が大きければ必ず良い住まいになるわけではありません。

反対に、金額だけを削れば良い工事になるわけでもありません。

必要な部分には使う。

残せる部分は残す。

今やらなくてよいことは将来へ回す。

補助制度や税制を利用できるなら活用する。

そして、工事が終わった後の生活のためのお金も残しておく。

住まいを再設計するということは、

お金の使い方も一緒に再設計すること

なのだと思います。

次回は、

「リノベーションは住宅の資産価値を高めるのか」

をテーマに、工事へかけたお金と不動産としての価値は同じなのか、性能、維持管理、立地、中古住宅市場などの視点から考えます。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 リフォーム・リノベーション、オーダー家具など、住まいや建築についてのご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 お問い合わせはこちらまで


参考資料

  • 国土交通省「住宅をリフォームした場合に使える減税制度について」


    2026年5月更新


    参照日:2026年8月13日。

  • 住宅金融支援機構「グリーンリフォームローン」


    参照日:2026年8月13日。

  • 国土交通省・経済産業省・環境省「住宅省エネ2026キャンペーン」


    申請状況:2026年8月13日時点


    参照日:2026年8月13日。

  • 国土交通省「既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取組み」


    参照日:2026年8月13日。

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