建築資材メーカーを知る② フローリング編
「無垢か複合か」だけではない。床材メーカーの得意分野から考えるフローリング選び

建築資材メーカーを知るシリーズ。
第1回の「化粧板編」に続き、第2回は「フローリング」を取り上げます。
住宅の打合せで、
「無垢フローリングにしたい」「傷がつきにくい床がいい」「マンションなので遮音フローリングで」「床暖房に使えるものを」
といったご要望をいただくことがあります。
ところが、フローリングの世界を少し掘り下げると、単純に「無垢か、それ以外か」では整理できません。
複合フローリングだけでも、
・挽き板・突き板・化粧シート
があり、さらに、
・床暖房対応・マンション用防音・耐水・ペット対応・車イス対応・耐キャスター・抗菌・抗ウイルス・リフォーム用薄型・店舗などの土足対応
と、さまざまな性能が加わります。
そして面白いのが、メーカーごとの立ち位置です。
大手住宅設備・建材メーカーが得意とする床と、天然木を得意とする専門メーカーの床では、そもそも「良いフローリング」の考え方が少し違います。
結論から言えば、
どのメーカーが一番優れているかではなく、どのメーカーが何を得意としているかを知ることが、フローリング選びでは重要です。
そもそも「フローリング」とは何か
まず正式な分類から整理してみます。
農林水産省のJASでは、フローリングは大きく
「単層フローリング」「複合フローリング」
の2種類に分けられています。
単層フローリング
ひき板を基材とし、厚さ方向の構成層が一層のもの。
一般に私たちが「無垢フローリング」と呼んでいるものの多くがこちらです。
一枚物だけでなく、長さ方向に材を継いだものも含まれます。
複合フローリング
単層フローリング以外の木質フローリング。
合板やMDF、その他の木質基材などの上に、天然木や化粧シートなどを組み合わせてつくられます。
住宅市場ではこちらの方が種類も多く、
意匠寸法安定性施工性耐久性床暖房遮音
などをメーカー側で設計しやすいのが特徴です。
JASという少々堅い分類から離れて実際の商品を見る場合、複合フローリングはさらに次の3種類に分けると理解しやすくなります。
① 挽き板フローリング
天然木を鋸で「挽いて」薄板にし、合板などの基材に張ったものです。
表面材は製品によりますが、現在の高級複合フローリングでは2mm前後のものが代表的です。
見た目だけなら無垢材と判別しにくいほど天然木の存在感があり、
木目導管節照明を受けたときの表情足触り
を楽しめます。
一方で基材は合板などで構成されるため、無垢材より寸法変化を抑えやすく、床暖房対応品も多い。
つまり、
「無垢の質感」と「工業製品としての安定性」の中間
に位置する床材です。
現在の高級住宅やリノベーションでは、非常に使いやすいカテゴリーだと思います。
代表例としては、
・朝日ウッドテック「Live Natural Premium」・EIDAI「銘樹・ロイヤルセレクション」
などがあります。
いずれも表面に2mm厚の天然木挽き板を使用した製品があります。
② 突き板フローリング
天然木を薄くスライスした「突き板」を、合板や木質基材に張ったものです。
挽き板より使用する天然木が薄いため、一本の丸太から多くの化粧材を取ることができます。
つまり天然木を非常に効率よく使える。
高価なウォールナットやブラックチェリー、メープルなどを比較的取り入れやすいのも特徴です。
朝日ウッドテックの「Live Natural MSX」では、0.3mmの天然木突き板を使用しています。
EIDAIの「銘樹モクトーン」などもこのカテゴリーです。
突き板だから安物、という話ではありません。
木目の選別貼り合わせ着色塗装表面加工
によって仕上がりはかなり変わります。
むしろ日本のメーカーが長年得意としてきた、非常に完成度の高い工業製品とも言えます。
③ シートフローリング
天然木ではなく、木目などを印刷・加工した化粧シートを表面に使用するタイプです。
少し前までのシートフローリングには、「いかにも印刷」という商品もありました。
しかし現在はかなり事情が違います。
印刷技術だけでなく、
エンボス艶の調整導管表現木目との凹凸同調
などが進み、遠目には天然木との区別が難しいものもあります。
シートフローリングの最大の強みは、天然木らしさそのものではありません。
性能を設計しやすいことです。
傷摩耗汚れ水薬品ペットキャスター
などに対応しやすいため、日常生活で気を使わず使える床をつくりやすい。
大手メーカーが非常に強い分野です。
では、どのメーカーが何を得意としているのか
ここからメーカーを見ていきます。

なお会社規模にはさまざまな定義があるため、ここでは法的な「大企業・中小企業」の区分ではなく、
総合建材系床材専業・木質建材系天然木・輸入材専門系
という実務的な分類で整理します。
大手・総合建材メーカー
DAIKEN|機能性フローリングに強い
DAIKENの特徴は、床を単なる仕上材ではなく「性能部材」として考えている点です。
代表的なのがマンション用防音床材。
「オトユカ」「イエリアオトユカ」「トリニティオトユカ」など、集合住宅向けの商品群が充実しています。
さらに、
・ペット対応・防滑・床暖房・耐傷・車イス・水濡れへの配慮・リフォーム用薄型床材・店舗、施設用
など用途別の商品が細かく設定されています。
「ワンラブフロア」など、小型犬の歩行性に配慮した床材も特徴的です。
意匠から選ぶメーカーというより、建物条件や要求性能から絞り込んでいくのが得意なメーカー
という印象です。
マンションリフォームでは特に候補に入りやすいメーカーです。
Panasonic|住宅全体とのコーディネート力
Panasonicでは、天然木系からシート系まで幅広い床材を展開しています。
特徴的なのは、ドア・収納・造作材などと床色を合わせやすいこと。
住宅全体のインテリアを統一したい場合には非常に扱いやすいメーカーです。
さらに、
耐傷耐汚染ペット対応床暖房水まわりマンション防音土足対応
といった機能を用途ごとに選べます。
リフォームでは、既存床の上から施工する薄型床材「USUI-TA」も興味深い製品です。
既存床を撤去せず上張りするという考え方は、これからの住宅改修ではさらに重要になっていくと思います。
LIXIL|建具との連携とリフォーム性能
LIXILでは「ラシッサ」シリーズを中心に、建具・収納などと内装をトータルでコーディネートできます。
シート系フローリングを得意とし、色柄の選択肢も豊富です。
耐水性やペットへの配慮など、生活上の性能を付加した商品も展開しています。
また、リフォーム用の薄型床材も重要なカテゴリーです。
リフォームでは、数mmの床厚の違いが
建具敷居框キッチン収納扉
の納まりを左右します。
薄型床材は見た目以上に重要な商品です。
EIDAI|挽き板・突き板・シートを比較しやすいメーカー
EIDAIは、フローリングの違いを理解するうえで非常に分かりやすいメーカーです。
「銘樹・ロイヤルセレクション」は2mm厚の挽き板。
「銘樹モクトーン」は天然木突き板。
「スキスム」にはシート系商品があります。
つまり、
挽き板突き板シート
を同一メーカー内で比較できます。
天然木の意匠性と、工業製品としての性能をどの位置で折り合わせるか。
その違いが見えやすいメーカーです。
ヘリンボーンやパーケットなど、貼り方そのものをデザインとして扱う商品もあります。
NODA|実用性の高い住宅用床材
NODAの「カナエル」シリーズは、
耐汚れ耐傷抗菌抗ウイルス防滑
など日常生活を意識した性能が特徴です。
天然木フロア、化粧シートフロア、マンション直貼り、リフォーム用、公商空間向けと、用途別に商品が整理されています。
また、転倒時の安全性を考えた衝撃吸収型の床材など、
高齢者住宅福祉施設子どものいる住宅
にも応用できる商品があります。
床はデザインだけでなく、人が転んだときに直接身体を受け止める建材でもあります。
超高齢社会では、こうした性能はもっと注目されてもよいと思います。
WOODONE|大手でありながら「無垢」を持つ存在
総合木質建材メーカーの中で、WOODONEは少し立ち位置が違います。
代表的なのが「無垢ピノアース」。
ニュージーランドで育てたニュージーパインを利用した無垢フローリングです。
さらに、ウォールナット、ブラックチェリー、メープル、オークなど天然木を生かしたフローリングも展開しています。
大手メーカーの商品供給力を持ちながら、無垢材も本格的に扱う。
これはWOODONEならではの特徴です。
床材専業・木質建材メーカー
朝日ウッドテック|複合フローリングの代表格
複合フローリングを語るなら、朝日ウッドテックは外せません。
代表的な「Live Natural Premium」は、2mm厚の無垢材挽き板を表面に使用。
無垢材の質感を残しながら、
床暖房耐摩耗抗菌抗ウイルス車イスメンテナンス性
などを組み合わせています。
一方「Live Natural MSX」は0.3mmの天然木突き板。
天然木の使い方を変えることで、価格・意匠・性能のバランスを調整しています。
「無垢にするか複合にするか」という二者択一ではなく、
天然木を何mm使い、どんな基材と組み合わせるか
という現代的なフローリングの考え方を象徴するメーカーだと思います。
ikuta|天然木と機能性を組み合わせる
イクタは複合フローリングを専門的に扱うメーカーです。
特徴的なのが「エアー・ウォッシュ・フローリング」。
光触媒技術を利用し、
抗菌抗ウイルス消臭VOC低減
などの機能を持たせています。
また天然木系からラスティック、ヘリンボーン、介護・ペット向けまで商品群が広い。
大手メーカーほど一般に名前を知られていなくても、設計者が商品を掘っていくと面白いメーカーの一つです。
無垢・天然木・輸入材を得意とする専門メーカー
MARUHON|樹種を選ぶ楽しさ
無垢フローリングの代表的な専門メーカーの一つがマルホンです。
多くの樹種・製品を取り扱い、無垢材ならではの選択肢があります。
大手建材メーカーのカタログでは、
オークウォールナットチェリーメープル
あたりが中心になりがちですが、天然木専門メーカーではさらに多くの樹種から選ぶことができます。
無垢フローリングの場合、
色だけでなく、
硬さ木目節比重足触り経年変化塗装
まで含めて選びます。
「ブラウンの床」ではなく「何の木を使うか」という選択に変わるのが、無垢材の面白いところです。
プレイリーホームズ|世界各国の木材と三層・複合
プレイリーホームズは、海外から木材や建材を輸入する商社機能と、商品開発を行うメーカー機能を持っています。
無垢フローリングだけでなく、
三層フローリング複合フローリング
も扱っています。
海外では日本の一般的な303×1818mmの複合フロアとは異なる、幅広・長尺の床材も多く存在します。
床を「建材」ではなく「木材そのもの」から選びたい場合に面白い会社です。
IOC|表面材の厚さまで選ぶ発想
IOCのラインアップはかなり独特です。
複合フローリングでは、表面天然木の厚みの違う商品を複数展開しています。
さらに、
無垢パーケットヘリンボーンヴィンテージ古材バンブーSPC
など非常に幅広い。
「床を何色にするか」ではなく、
床そのものを空間デザインの材料として選びたい設計者向け
という印象があります。
CHANNEL ORIGINAL|国産材・トレーサビリティという視点
チャネルオリジナルでは、北海道産材を使った無垢フローリングなどを扱っています。
原木の産地だけでなく、流通・製材・加工・保管までを追える商品を展開している点も特徴です。
これから木材を考える際には、
樹種価格見た目
だけでは不十分です。
どこで育ち、どこで製材され、どのように運ばれたのか。
木材のトレーサビリティも、床材選択の一つの価値になっていくでしょう。
機能からフローリングを分類するとさらに分かりやすい
メーカーではなく「性能」から整理すると、現在のフローリング市場は次のように分類できます。
機能 | 主な用途 |
床暖房対応 | 戸建・マンション |
防音 | マンション |
耐水 | キッチン・洗面・トイレ |
防滑 | ペット・高齢者 |
耐傷・耐摩耗 | 子育て・店舗 |
キャスター・車イス対応 | 在宅ワーク・福祉 |
抗菌・抗ウイルス | 住宅・施設 |
衝撃吸収 | 高齢者施設・子ども施設 |
薄型上張り | リフォーム |
土足対応 | 店舗・事務所・宿泊施設 |
ここで注意したいのが、
「機能が多い床=良い床」ではない
ということです。
無垢材の魅力は、表面コーティングを重ねて性能を増やす方向とは少し違います。
傷がつけば削る。汚れれば補修する。色が変われば、それを経年変化として楽しむ。
これは工業製品とは別の価値観です。
無垢材の弱点は、本当に弱点なのか
無垢材には、
反る隙間が出る傷がつく水に弱い色が変わる
といった説明がよくされます。
確かにその通りです。
しかし考え方を変えると、
削れる補修できる再塗装できる年月とともに表情が変わる
という特徴でもあります。
複合フローリングでは、表面層を超えて傷が入れば補修が難しいことがあります。
無垢材は厚みそのものが木なので、何十年後でも手を入れられる可能性があります。
「完成時が最も美しい工業製品」と「使いながら育てていく材料」。
この違いは非常に大きいと思います。
マンションでは「好きな床」だけでは決められない
マンションリフォームでは、管理規約の確認が不可欠です。
特に床衝撃音。
今でも管理規約には、
「LL-45以上の性能を有する床材」
などの表記が残っている場合があります。
一方、現在の床材性能評価ではΔL(デルタL)等級が使われています。
直張り防音フローリングでは、床材裏面のクッション材などによって軽量床衝撃音を低減します。
ただし床材だけで建物全体の遮音性能が決まるわけではありません。
スラブ厚梁スパン床構造二重床天井施工状態
なども影響します。
そのためマンションでは、
「この床が好きだから貼る」
ではなく、
管理規約 → 床構造 → 必要性能 → 商品選定
という順番で考える必要があります。
床暖房と無垢材
「無垢材は床暖房に使えない」
という説明も時々ありますが、これは少し乱暴です。
床暖房対応の無垢フローリングは存在します。
ただし何でも使えるわけではありません。
樹種含水率幅厚さ乾燥方法施工方法
によって、床暖房時の収縮や割れのリスクが変わります。
床暖房を採用するなら、単に「無垢か複合か」ではなく、メーカーが床暖房対応として指定している商品かを確認すること。
この一点が重要です。
その意味では、挽き板複合フローリングは非常に合理的な選択肢です。
天然木の質感を確保しながら、床暖房時の寸法安定性をメーカー側で検証できます。
これからのフローリングはどうなるのか
今後の床材を考えると、大きく三つの方向に進むと思います。
① 天然木を少量で有効利用する
良質な広葉樹を大量に使い続けることはできません。
無垢材だけでなく、
挽き板突き板
によって一本の木から取れる床材を増やすことは、木材資源を考えるうえでも重要です。
② リフォームは「剥がす」から「残す」へ
1.5mm、2.5mm、3mm、6mmなど、薄型リフォーム床材が増えています。
既存床を解体し、
搬出し、処分し、新しい下地と床を施工する。
これまで当然だった工程を減らせれば、
工期廃棄物運搬コスト
を抑えられます。
リフォーム・リノベーションでは、今後さらに重要なカテゴリーになるでしょう。
③ 床が人に合わせる時代へ
ペット高齢者車イス子ども在宅ワーク
住まい方は以前より多様です。
「住宅用フローリング」という一種類の床ではなく、住む人や使う場所に合わせて性能を変える。
床材も一つの標準品から、用途別の商品へと細分化していくと思います。
最後に 床は「色」だけで選ばない
フローリングの打合せでは、どうしても最初に色を見てしまいます。
オークにするか。ウォールナットにするか。明るくするか。暗くするか。
もちろんそれも大切です。
しかし本来はその前に、
無垢か複合か。
複合なら、
挽き板か突き板かシートか。
床暖房はあるのか。
マンションなら遮音性能は何が必要か。
ペットはいるのか。
水まわりまで同じ床を続けるのか。
10年後、20年後に補修できる床を求めるのか。
こうした条件を整理する必要があります。
メーカーを知ることは、ブランドを覚えることではありません。
そのメーカーが、木をどう考え、床をどう考え、暮らしに対してどの性能を与えようとしているのかを知ること。
大手メーカーがつくる高機能なシートフローリングにも理由があります。
専門メーカーが扱う、節や色差のある無垢材にも理由があります。
そしてその中間に、挽き板や突き板という非常に優れた選択肢があります。
床は毎日、人が直接触れる建築材料です。
壁紙よりも家具よりも、長い時間身体を預ける材料なのかもしれません。
だからこそ、カタログの色番号だけではなく、その床が「何でできているのか」まで知ったうえで選びたいものです。
主な参考資料・メーカー公式情報
※2026年9月14日確認
・農林水産省「フローリング 日本農林規格 JAS 1073」・DAIKEN フローリング・床材・Panasonic フローリング・木質床材・LIXIL フローリング・床材・EIDAI フローリング・壁材・床造作材・NODA 床材・WOODONE 床材・フローリング・朝日ウッドテック Live Naturalシリーズ・ikuta フローリング製品・株式会社マルホン フローリング・プレイリーホームズ フローリング・IOC フローリング・床材・CHANNEL ORIGINAL フローリング・一般財団法人 日本建築総合試験所 床材の床衝撃音低減性能「ΔL等級」
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