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「オーダー家具のすすめ|住宅にこそ取り入れたい家具の考え方」

店舗だけではもったいない。住宅にこそ取り入れたい「暮らしに合わせる家具」


住宅に合わせて設計した壁面収納やカップボードなどのオーダー家具施工イメージ
住宅に合わせて設計した壁面収納やカップボードなどのオーダー家具施工イメージ

店舗をつくる仕事をしていると、カウンター、収納棚、陳列棚、ベンチ、レジ台など、家具や什器をオーダーで製作することは珍しくありません。

理由は単純です。

その場所に必要な寸法と機能を持った既製品が、なかなか存在しないからです。

店舗は限られた面積の中で、

「ここに商品を並べたい」「ここで接客したい」「この高さにレジを置きたい」「この壁いっぱいを収納にしたい」

と、目的がかなり明確です。

そこで建物に合わせて家具を設計します。

ところが住宅になると、なぜか順番が逆になることがあります。

家具店へ行き、気に入った家具を買い、家に持って帰ってから、

「あと10cm小さければよかった」「壁との間に妙な隙間ができた」「コンセントが隠れた」「収納したかった物が入らない」

となる。

人間というものは、数千万円かけて住宅をつくっておきながら、最後の家具で家の寸法を家具に合わせ始めます。

少し不思議な話です。

オーダー家具は「高級家具」ではない

オーダー家具という言葉から、

「無垢材で職人がつくる高級家具」

というイメージを持つ方もいると思います。

もちろん、そのような家具もあります。

しかし私が住宅に取り入れてほしいと考えるオーダー家具は、少し違います。

暮らしに合わせて寸法や機能を設計する家具です。

材料も、

木材突板ポリ合板メラミン化粧板化粧シートスチールガラス

など用途によって選べます。

扉を付けることもできますし、あえてオープン棚にすることもできます。

高価な材料を使わなくても、設計次第で十分に美しく使いやすい家具はつくれます。

つまり、

「高い材料を使うこと」と「オーダーすること」は別の話なのです。

IKEAやニトリと比べれば、当然高い

ここはごまかしても仕方ありません。

IKEAやニトリなどの量産家具と比べれば、一般的な造作・オーダー家具の価格は高くなります。

大量生産された商品と、一つの住宅のために採寸し、設計し、製作する家具。

同じ価格になるはずがありません。

IKEAは現在もPAXやBESTÅなど、既製の部材を組み合わせて収納を計画できるプランニングシステムを展開しています。ニトリにも幅や高さなどを選べる受注生産のセミオーダーラックがあります。

これは非常に合理的な仕組みです。

大量生産によって価格を下げながら、ある程度まで住宅に合わせられる。

ですから私は、

既製家具とオーダー家具を対立させて考える必要はない

と思っています。

向いているところに、向いているものを使えばいい。

ダイニングチェアやサイドテーブルまで、すべてオーダーする必要はありません。

IKEAでもニトリでも、気に入ったものがあればそれでいい。

一方で、

「この場所だけは既製家具ではどうしても納まらない」

というところにオーダー家具を使う。

この考え方が住宅では非常に有効です。

たとえば、3mの壁があったら

幅3,000mmの壁一面を収納にしたいとします。

900mm幅の既製収納を3台並べれば、

900mm × 3台 = 2,700mm。

300mm余ります。

150mmずつ左右を空けるのか、片側に300mm空けるのか。

家具の上にも空間が残るかもしれません。

もちろん、それでも収納としては成立します。

一方、オーダー家具なら、

幅3,000mm天井高さ2,400mm

という空間そのものを収納として設計できます。

問題は、この差をどう考えるかです。

単純に家具の価格だけを比較すれば、量産家具に軍配が上がるでしょう。

しかし、

収納量掃除のしやすさ地震時の転倒対策部屋の見え方配線処理コンセント位置エアコンや換気との取り合い

まで含めると、評価は変わってきます。

「隙間がない」というのは思っている以上に大きい

住宅のオーダー家具で特に大きなメリットが、建築との隙間を処理できることです。

壁と家具の間。

家具と天井の間。

梁の下。

窓の下。

柱の横。

階段の下。

住宅には、実に中途半端な寸法がたくさんあります。

既製家具にとっては困った寸法ですが、オーダー家具にとっては単なる設計条件です。

むしろ、

その条件を利用して家具をつくることができます。

例えば梁型を避けながら本棚をつくったり、窓台と高さを合わせてデスクを延ばしたり、階段下を収納にしたり。

建築と家具の境目がなくなっていきます。

ここがオーダー家具の面白いところです。

住宅でおすすめしたい場所

オーダー家具は住宅のあらゆる場所で使えますが、特に効果が大きい場所があります。

リビングの壁面収納

テレビ、AV機器、本、書類、Wi-Fiルーター、ゲーム機、掃除機。

現代のリビングには意外なほど多くの物があります。

それぞれ別々の家具を置くより、壁一面をまとめて設計した方が部屋はすっきりします。

配線を家具内部に隠すこともできます。


リビングの壁面収納
リビングの壁面収納

ダイニング

ダイニングテーブルだけを家具として考えるのではなく、

収納ベンチデスク飾り棚カウンター

を一体として考える方法があります。

子供が小さい時は勉強机。

成長したらパソコンデスク。

その後は趣味の作業台。

暮らしの変化を想定して設計することもできます。

キッチン

キッチンメーカーの収納は非常によくできています。

ただ、

電子レンジ炊飯器コーヒーメーカーゴミ箱食品ストック

など、家庭ごとに持っている物は違います。

それなら最初から、

「何をどこに置くか」

を決めて収納をつくる。

これだけで家事動線はかなり変わります。



洗面室

個人的にオーダー家具との相性がかなり良い場所です。

タオル洗剤下着ドライヤー化粧品体重計掃除用品

小さな空間なのに収納する物が多い。

しかも洗濯機や洗面台があり、残ったスペースは中途半端。

まさにオーダー家具向きです。


洗面カウンター
洗面カウンター

玄関

靴だけを収納する時代でもなくなりました。

傘ヘルメットベビーカーゴルフバッグアウトドア用品防災用品宅配用品

家庭によって玄関に置きたい物はかなり違います。

家族構成から逆算して収納を設計した方が合理的です。


玄関収納
玄関収納

家具なのか、建築なのか

オーダー家具を考えていくと、面白いところに行き着きます。

壁いっぱいにつくった収納は家具なのか。

窓際につくったベンチは家具なのか。

キッチンと連続したカウンターは家具なのか。

ベッドと一体になった壁面収納は家具なのか。

境界はだんだん曖昧になります。

私は、それでいいと思っています。

住宅を、

床壁天井建具設備家具

と別々の商品として考える必要はありません。

全部まとめて「生活するための空間」と考えればいい。

店舗設計では比較的当たり前に行われている考え方です。

それを住宅でもやってみる。

オーダー家具は「暮らし方」を注文するもの

オーダー家具をつくる時、本当に重要なのは色や材料を決めることではありません。

最初に聞きたいのは、

何を収納したいのか。

どこで何をするのか。

誰が使うのか。

朝はどう動くのか。

夜はどう過ごすのか。

子供が成長したらどうなるのか。

10年後、この場所をどう使っているのか。

という話です。

その答えを寸法に置き換えていく。

高さを決め、奥行きを決め、扉を決め、棚を決める。

すると家具が出来上がります。

そう考えると、

オーダー家具とは、家具そのものを注文するというより、自分たちの暮らし方を形にすること

なのかもしれません。

長く使うという考え方

家具は家電とは少し違います。

きちんとつくられた家具なら、10年、20年と使うこともできます。

壊れた丁番を交換する。

棚板を追加する。

扉だけ交換する。

塗装し直す。

場合によっては別の場所へ移設する。

最初から住宅や生活に合わせて考えた家具は、単なる消耗品ではなくなります。

国土交通省も、既存住宅について「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」方向への転換を掲げ、住宅ストックの有効活用を進めています。

住宅を長く使うのであれば、その中に置く家具についても同じ視点があっていいはずです。

全部オーダーにしなくていい

最後に一番伝えたいのはここです。

家具を全部オーダーにする必要はありません。

ソファは気に入った既製品。

椅子も既製品。

ベッドも既製品。

でも、

壁面収納だけオーダー。

キッチン背面だけオーダー。

洗面収納だけオーダー。

そんな使い方で十分です。

IKEAのように既製部材を組み合わせる家具もある。ニトリのようなセミオーダーという選択肢もある。そして完全なオーダー家具もある。

家具には、

既製品 → 組み合わせ家具 → セミオーダー → フルオーダー

という連続した選択肢があります。

予算と場所によって使い分ければいいのです。

家具を探す前に、家具を考えてみる

家具が必要になった時、私たちはすぐ家具店やインターネットで商品を探します。

それはそれで正しい。

でも、その前に一度だけ、

「ここには、どんな家具があれば一番いいのだろう」

と考えてみてください。

幅は何mm必要なのか。

何を収納するのか。

どこにコンセントが必要なのか。

10年後も使えるのか。

その答えが市販品にあれば、市販品を買えばいい。

なければつくればいい。

店舗では昔から普通にやってきたことです。

住宅でも、

「家具に家を合わせる」のではなく、「家と暮らしに家具を合わせる」。

そんな発想が、もう少し一般的になってもいいのではないでしょうか。

オーダー家具は確かに安くありません。

けれど、

ぴったり納まること。必要な物が必要な場所に入ること。建築と家具が一体となって見えること。長く使えること。

価格表には現れにくい価値が、そこにはあります。

家具を一つ買うのではなく、暮らしの一部を設計する。

それが、住宅にオーダー家具を取り入れる一番の面白さだと思います。


参考資料・確認日

  • IKEA Japan「プランニングツール」


    PAX、BESTÅ、PLATSA等の収納プランニングサービス


    2026年8月15日確認

  • ニトリネット「セミオーダーラック」


    幅・高さ・奥行等のバリエーションを持つ受注生産収納家具


    2026年8月15日確認

  • 国土交通省「既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取組み」


    住宅ストックを適切に手入れし長く使う方向性について参照


    2026年8月15日確認


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