年を取るのが楽しみな家
- kojo masaaki

- 5月5日
- 読了時間: 3分
リフォームプランのご相談をいただいた時、現地を拝見していて、とても楽しくなる家があります。
それは、その家が「良い年の取り方」をしている時です。
新築したばかりの家は、どの家もきれいです。
壁も床も建具も新しく、傷ひとつない状態は、やはり気持ちのよいものです。

けれども、家の本当の価値は、新築時だけでは分からないように思います。
年月を重ねることで、味わい深くなっていく家があります。
一方で、新築当初は完璧に見えても、時間が経つにつれて、ただ色褪せてしまっただけに見える家もあります。
その違いはどこにあるのか。
デザインやインテリアの好みといった主観的な要素を一度横に置くなら、やはり大きいのは「本物の材料を使っているかどうか」だと思います。
木、石、塗り壁、鉄、真鍮。
そうした素材は、傷や色の変化さえも、その家の表情に変えてくれます。
使い込まれた床の艶、手が触れる場所の丸み、陽に焼けた木の色。
それらは新品にはない、その家だけの記憶です。
今、日本では空き家が増え続けています。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%と過去最多になっています。
また、建築費や資材費の高騰、省エネ基準への対応、脱炭素の流れもあり、「壊して新しく建てる」だけではなく、既存の建物をどう活かすかが、以前にも増して大切になってきました。
そう考えると、これからの家づくりやリフォームで大切なのは、完成した瞬間の美しさだけではないのだと思います。
長く使えること。
手入れしたくなること。
暮らしの変化に合わせて、少しずつ直せること。
住む人の年齢や家族構成が変わっても、受け止められる余白があること。
あまりにもデザインが完結しすぎている家や、細部まで作り込みすぎている家は、リフォームの際に扱いにくいと感じることがあります。
もちろん、作り込むことが悪いわけではありません。
ただ、その時の暮らし、その時の好み、その時の家族構成だけに合わせて固定しすぎてしまうと、後から変化を受け入れにくくなるのです。
人も家も、生き物です。
暮らし方は変わります。
家族の形も変わります。
身体の状態も、仕事の仕方も、趣味も、時代も変わっていきます。
その変化に対して、家も少しずつ付き合っていける方がいい。
最近では、断熱改修や窓の性能向上、省エネ設備への更新など、住まいの性能を高めるリフォームにも国の支援制度が設けられています。
単に古いものを新しくするのではなく、今ある家の良さを残しながら、寒さ・暑さ・使いにくさを改善していく。
そうしたリフォームは、これからますます重要になっていくはずです。
古くなった時に、「手入れをして、もう少し長く使いたい」と思える家。
そこには、単なる建物以上の価値があります。
何でも手に入る時代になりました。
新しいものも、便利なものも、探せばすぐに見つかります。
けれども、「時間を重ねた美しさ」だけは、お金で一瞬にして買うことができません。
家にも、人にも、素敵な古さというものがあります。
無理に若作りするのではなく、時間を重ねたからこそ出てくる深みや安心感。
そんなふうに年を取っていける家は、きっと住む人の暮らしも、少し豊かにしてくれるのだと思います。
リフォームとは、古くなったものをただ新しくすることではありません。
その家が重ねてきた時間を読み取り、これから先の暮らしに合わせて、
もう一度整えていくこと。
年を取るのが楽しみになる家。
そんな家に出会うと、私たちもまた、嬉しくなります。



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